2023年11月2日 BLOG最近何が起きているのか?DeFi の現状とこれからの課題(豊崎亜里紗)

本記事では、最新のDeFi(分散型金融)の現状と動向、そして将来に向けての課題について説明していきます。DeFiは、近年急速に進化している分野ではありますが、抱えている問題も多くあります。ここでは客観的な視点で最近の動向とこれからの課題についてお話しできればと思います。

そもそも DeFi とは何か?分散型金融のおさらい


DeFiとは、ブロックチェーン技術を用いて中央集権的な行政や金融機関を通さず、分散型のプラットフォーム上で金融サービスを提供する仕組みを指します。DeFiプロトコルでは「スマートコントラクト」というブロックチェーン上で自動的に実行処理されるルールを作り、それらをアセットの交換や貸し借りなどの金融取引を遂行するプログラムが使われております。これにより、世界どこにいても、銀行口座を持たずとも透明性の高い金融サービスにアクセスできるようになります。(参考:
金融庁事務局説明資料

現在代表的な DeFi プロトコルには以下のようなものがあります:

分散型取引所(DEX):中央集権的な取引所に頼らずに、トークンの交換を行うプラットフォームです。AMM という画期的な仕組みにより、今までは中間業者が売り手と買い手を繋げる必要がありましたが、流動性があれば即座に中間業者なしに違う量や価格帯でもアセットの売買が可能になりました。

レンディングプロトコル(Lending & Borrowing):ユーザーは自分の資産を貸し出し、利子を受け取ったり、資産を借り入れたりすることができます。金利、担保率、貸出可能額などは全て自動的に計算される為、こちらも仲介が不要です。

ステーブルコイン(Stablecoins):価値の安定した仮想通貨で、デジタル資産の価格変動リスクを軽減します。代表例は USDC といい、1 USDC = 1 米ドルのトークンです。

DeFi はイーサリアムがローンチした 2016 年以降、2018 年頃からコンセプトが誕生し、2020年に大きく躍進を遂げました。DeFiプロトコルに預けられた総額のTVLが増加し、2021年には数十億ドルの価値がDeFiプラットフォームに預けられています。DeFiの利用者数も急増しており、世界中の個人投資家や機関投資家が参加しています。しかし、これらの華やかな成長の反面、様々な問題点も危惧されています。

 

DeFiの現状と課題


2022 年には世界規模2位の取引所、FTXの崩壊や Terra / Luna の崩壊など DeFi にとって難しい問題が沢山起こりました。直近ですと Curve Finance 提供の流動性プールがハッキングにより
約100億円の不正流出被害を受けました。(参考:あたらしい経済)

これらの被害の背景には DeFi の業界としての未熟さが未だ際立っています。これらの課題に対処することが、将来の発展に向けた重要な課題です。

① セキュリティ:DeFiプラットフォームはスマートコントラクトを使用しているため、バグや脆弱性がリスクとして潜在しています。監査の義務化やリアルタイムのデータをアップデートするオラクルという技術への投資を増やすことが求められます。

② サステイナビリティ:一部のDeFiプロトコルは、トランザクションの多さによるネットワークのスケーラビリティの課題を抱えています。エコシステム全体のサステイナビリティを確保するために、スケーリングソリューションが必要です。ゼロ知識証明などの技術を使ったロールアップなどが注目されています。(参考:セコムIS研究所)

③ オンチェーンでの信用偏差値:先日イーサリアムの創業者のヴィタリックが公開したブログ記事に記載している通り、「個の存在証明」はこれからの金融システムやスパム対策に対しての信用偏差値を創造するのに重要になってきます。

④ 実質を伴う収益: 従来の DeFi で表示されている 3桁や 4桁の高金利は自社トークンの発行や、機能別のトークンの生成が金利元でした。しかし、そうするとトークン自体に価値が付かず、全ての DeFi トークンは発行してからすぐに価値が落ちました。取引手数料などの実際のプロトコル収益が発生した際に得られる利回りでトークン自体の価値を作っていく必要性があります。

⑤ UXの向上:DeFiはまだ技術的なハードルが高く、一般のユーザーにとって使いづらいという課題があります。より使いやすいインターフェースの提供が求められます。また、インターオペラビリティといい、チェーン間や複数のDeFiプラットフォーム間での相互運用性を高める取り組みを進めることにより、スムーズに資産をプロトコール間で移動できるようになることが求められています。

⑥ ガバナンスの進化:DeFiプラットフォームの運営において、コミュニティの意見を反映するガバナンスシステムが重要視されていますが、現状は参加率が低い事や、悪意ある一時的な介入などが見受けられます。正しいユーザーが積極的にプラットフォームの運営に参加したいと思わせることが、コミュニティの強化に繋がります。

 

まとめ


DeFiは、金融業界における革命的なテクノロジーとして今後も進化を続けるでしょう。現在は多くのチャレンジがありますが、セキュリティ対策や規制への対応など、様々な課題を克服することで、より持続可能な未来を築くことができると信じています。まだ $48B (2023年8月時点)と市場としては小さいですが、世の中の全ての金融システムを公平にしていく過程で由緒正しい資本市場に成長していくと思ってます。

Cega では DeFi の技術の最先端を日々研究しています。Cega は世界初でエキゾチックオプションという条件付けを可能としたオプションのスマートコントラクトを開発し、DeFi デリバティブの分野を牽引しています。そのスマートコントラクトの使い道の一つとして USDC のステーキング製品を展開しております。

DeFi デリバティブがどうやって既存の DeFi 問題を解決しそうなのかなど、今後書いていければと思います。Cega をご覧になるには http://cega.fi に是非アクセスしてみてください。

 


Sanic Pte Ltd. 代表取締役
JBA理事 豊崎 亜里紗
Xアカウント:@arisatoyo_jp

 
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