2021年に盛り上がりを見せたNFT
出典:”Everydays: the First 5000 Days” created by Mike Winkelmann
NFT(Non-Fungible Token)はブロックチェーン上のデジタルアセットを指します。NFTとして扱うデジタルアセットには、デジタルアート・PFP(プロフィール画像)・ゲームアイテム・証明書・会員権などがあり、デジタル上のあらゆる”モノ”に適用可能です。2021年は3月にデジタルアーティストBeeple氏の作品がクリスティーズにおいて約7,000万ドルで落札されたことを皮切りに、8月にNFTマーケットプレイスOpenSeaで月間取引高が34億ドルに達するなど、華々しい数字と共にNFTという名前や概念が一般的にも認知されるようになりました。このブログではNFTの中身について改めて理解を深めてみたいと思います。
ERC-721という標準規格
現在、NFTの大半がERC-721という標準規格に従っており、私はこの標準規格こそNFTが持つパワーの源だと考えています。ブロックチェーンはプログラム(スマートコントラクト)実行機能付きオープンデータベースと捉えることもできますが、標準規格が存在しなければ意味不明なデータが羅列されているだけに見えるでしょう。標準規格が存在するとデータに意味づけされると同時に、各事業者は互いの関係を密にすることなく標準規格に沿ってサービスを作ることができます。Wallet事業者はERC-721の表示サービスを、NFTマーケットプレイス事業者はERC-721の取引サービスを、ゲーム事業者はERC-721規格でゲームアイテムを作ります。そうすると自動的に互いのサービスが連動され、NFTの経済圏(エコシステム)を築くことになります。今後、ERC-721を取り扱うサービスやコンテンツが増えれば増えるほど、NFTエコシステムが自ずと大きくなっていくでしょう。
ERC-721規格の中身
出典:https://eips.ethereum.org/EIPS/eip-721
ERC-721規格そのものは以下を見るのが正確です。
https://eips.ethereum.org/EIPS/eip-721
ここでは理解を手助けするために、ERC-721の重要な機能を4つ抜粋して説明することにします。
- 所有情報
- 譲渡(transfer)
- 委任(approve)
- メタデータ
それぞれについて見ていきましょう。
1.所有情報
ERC-721ではNFT1つ1つにIDを振って区別できるようにし、それぞれのNFTがどのアドレスによって所有されているかが管理されており、いつでも確認することが可能です。内部的には(NFT ID, 所有者アドレス)という組み合わせデータで保持されており、所有者が変わればデータを更新します。
2.譲渡(transfer)
自分が所有するNFTを任意のアドレスに譲渡する機能です。ERC-721ではNFTの譲渡を実行可能なのはNFTの所有アドレスか、委任されたアドレスに限られます。ブロックチェーンでは署名することでどのアドレスで実行したかを判断可能ですが、そこで使われるのがPrivate Keyです。なお、Private Keyの重要性や性質を実世界で例えると実印ですので、他人に渡すのは厳禁です。
3.委任(approve)
自分が所有するNFTを譲渡する権利を任意のアドレスにも付与する機能です。最も多いユースケースとしては、NFTマーケットプレイスへの委任でしょう。NFTをマーケットプレイスに出品する際に譲渡の委任を行い、いつかNFT取引が成立した際に自動的にNFTを購入者に譲渡する処理をしてもらいます。信頼できない相手に委任してしまうとNFTを奪われかねないので、運用状態や実績などから信頼できるかどうかを十分に検討してから委任する必要があります。
4.メタデータ
出典:https://docs.opensea.io/docs/metadata-standards
NFTの実態を指し示す機能です。ほとんどの場合、JSON形式でNFTの説明文や画像URLなどが表現されています。メタデータフォーマットはまだ標準化されているとは言えませんが、以下のOpenSeaが公開しているフォーマットをたたき台にすることが多いです。
https://docs.opensea.io/docs/metadata-standards
ただ、これはマーケットプレイスの表示に焦点を当てたフォーマットであり、実態を最
適に表現するものとは言いきれません。
メタデータの標準化の重要性
前述した通り標準規格こそNFTのパワーの源だと考えていますが、NFTの実態を指し示すメタデータは標準化されていると言えません。ERC-721によってNFTの表示や取引のエコシステムはグローバルかつオープンに拡大しましたが、NFTの利用に関しては各サービス事業者内でクローズになっているのが現状です。最近、ブロックチェーンの世界では相互運用性(Interoperability)が注目されていますが、NFTの相互運用性を高めるにはNFTの種類ごとのメタデータ標準化が重要です。たとえば、NFTをメタバースのデジタルアセットとして使いたい場合、各メタバースで利用可能な3Dフォーマットを決めておかないと使い物になりません。この課題意識の下、NFT メタデータ標準「Oct-Pass」を立ち上げましたが推進は進んでおりません。こういった標準化はルール先行だとうまくいかないことも多く、かといって標準化が進まないと具体的なユースケースも生まれにくいという卵鶏の関係にあって難しいです。しかし、事業者を横断してメタデータの標準化ができればNFTのエコシステムはさらに爆発的に発展すると考えています。
出展:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000034671.html
double jump.tokyo株式会社 代表取締役CEO
JBA理事 上野 広伸
Xアカウント: @h2ueno