CBDC分科会イベント ~ 日本版CBDCを考える ~
動画・資料・質問への回答
■実施概要
【日時】6月11日(木)19:00~20:30
【場所】オンライン
【概要】-CBDCの概要紹介
-CBDCはどういうユーザーメリット、社会的変化をもたらすか?
-CBDCと法規制
-CBDCと技術的課題
【パネリスト】※ 50音順
大野 紗和子 氏 スタートバーン株式会社
加納 裕三 氏 日本ブロックチェーン協会 兼 株式会社bitFlyer Blockchain
副島 豊 氏 日本銀行
中島 真志 氏 麗澤大学
中村 龍矢 氏 株式会社LayerX
宮沢 和正 氏 ソラミツ株式会社
【モデレーター】
福島 良典 氏 日本ブロックチェーン協会 兼 株式会社LayerX
■資料
日本銀行_副島様
麗澤大学_中島様
ソラミツ_宮沢様
■動画
■質問への回答
当日は多くのご質問をいただき、ありがとうございます。イベント中に回答できませんでしたので、こちらをご確認ください。
- ブロックチェーン型のCBDCの場合(例えばカンボジア)、ノードは誰が立てることになっているのでしょうか?
回答)中央銀行です。 ソラミツ_宮沢様 - 給与のデジタルマネーでの支払いはいつから法改正されると見込んでますか?
また複数のpayなどに払うことも可能なのでしょうか?
回答)年内に労働基準法の省令改正が行われると政府より聞いております。また、各社の給与計算パッケージに対応する必要があります。対応したキャッシュレス支払い手段に対しては、複数であっても支払いができると思われます。 ソラミツ_宮沢様 - CDBCのインフラは、安定的/継続的に提供できる必要があると考えています。その上で、ブロックチェーン(という枯れていない技術)を採用することの妥当性をどうお考えでしょうか?例えば、基盤のプログラムに大幅な修正が発生した場合、運用中のCDBCのシステムに与える影響など。
回答)できる限り枯れた技術を使うことで開発や運用しやすくするのはもちろん大事だとは思います。
一方、技術が枯れているかどうか、技術選択における数ある観点のうちの一つでしかないと考えています。セキュリティに限っても、まずそのシステムの満たすべきセキュリティ要件とそのモデルをしっかり定義し、設計・実装それぞれのレベルで要件が満たされているか適切な方法で検証し、それでも意図しないバグなどが発生した場合に備えて対処する体制を整えたり、リスク管理することが本質だと思います。
本質的な努力がされていない限り、どんな技術を使ってもミスは発生しやすくなります。現に、「枯れた技術を使って」作られた色々なシステムがバグを起こしています。
また、ブロックチェーンに関しては、確かに新しさによるリスクはあれど、ブロックチェーンの持つ高い監査性、故障耐性により、ブロックチェーンだからこそ減らせるリスクもあります。
これらの論点を含め、メリットデメリットを総合的に判断して技術選択をするべきだと思います。 LayerX _中村様 - 本日のテーマである「リテール型のCBDC」に関し、1点質問です。日本銀行FinTech所長の副島さんが冒頭の講演のなかの「課題」のなかで、「CBDCと現金とのデュアルシステムは残る」と仰られていました。そこで、今回の出席者の他の方々に、「リテール型CBDCを発行された場合、既存現金及び既存預金口座との関係」はどのように考えられているのか、を聞きたいです。
それは「現金と預金は、CBDCに淘汰されていく」のか?fそれとも「現金と預金とCBDCは、各々の利便性/メリットを活かしつつ、共存共栄していく」のか?あるいは、その他の別の道を進むことになるのか?です。宜しくお願い申し上げます。
回答1)CBDCの導入を計画している中央銀行の中で、「銀行券の廃止」を打ち出しているところは、1行もありません。
したがって、CBDCが導入されたあとも、しばらくは銀行券とCBDCが併存した世界になるものとみられます。
一方、預金については、CBDCは現金の機能をデジタル化したものであって、預金を代替するものではありません。
したがって、中銀では「預金とCBDCとの間のシフト」については制限的な手段を導入するものと考えられます(CBDCの保有に上限を設けるなど)。 基本的には、「共存共栄」の方向でしょう。 麗澤大学_中島様回答2)現金との共存という意味では、イベントでも話題になったオフライン環境での決済やデジタル格差への配慮といった面が大きいかと思います。
パネルでもお話しした通り物理で完結するユーザーインターフェースが最低限必要で、それが現在の現金なのかはさておき、ある程度共存する可能性はあると考えています。 LayerX _中村様 - 英国中央銀行が指摘するように、リーテールCBDCを導入すると民間銀行のdisinvestment (銀行の口座からお金が引き落とされれること)が起きたら、金融危機を起こす可能性を示唆していますが、その点をどのようにお考えになりますか?
回答)KYC/AMLを行うなど、民間銀行が中央銀行と個人の間に立つパターンはある(既存の他国のCBDC提案ではそうなっている)ものの、今日の預金を、同じ形式・度合いで民間銀行が担い続けられなくなる可能性はあるでしょう。急激な預金の減少に限らず、様々な金融リスクを考慮し、CBDC導入の速度はある程度コントロールしながら進めるものと思います。デジタルだからこそ、こういったコントロールを現金に比べて行いやすいという観点もあると思います。 LayerX _中村様 - エディとSuicaはカードにバリューがありますよね?どうして合わないのでしょうか??
回答)利用者のタッチが不完全だった、加盟店がデータのアップロードを忘れる、端末故障、通信障害などが原因です。 ソラミツ_宮沢様 - 量子コンピュータの実用化はまだ先の話とは言え、そうなってからでは遅いので、暗号技術そのもののセキュリティについて量子コンピュータが実用化される前に対策が必要と思います。全てのシステムに関わることと思いますが、皆様どの様にお考えでしょうか?
回答)実用的な量子コンピュータが来る未来に備えて、産学どちらでも耐量子暗号は盛んに研究されています。
特定の暗号が時代とともに弱くなっていくことは昔からあったことであり、色々な暗号ユースケースにおいて新陳代謝されてきたので、CBDCに関しても同様の準備をするのみと思います。 LayerX _中村様 - CBDCでクロスボーダーなどは厳しいのではないか?被仕向側もデジタル化していないと厳しいと思います。
回答)受け取り側もそのCBDCのシステムにアクセスできる必要があると思いますが、ここは技術的に新しい話ではないので、クロスボーダー決済に使う上でネックにはならないと考えています。 LayerX _中村様 - オフラインの二重支払いの防止は、最大金額を最後の残高にしても複数デバイスを使われてしまったら、避けられないので、決済に使えるデバイスは1デバイスに限定する必要があるのではないかと思ったのですが、この認識であってますでしょうか?
回答)たとえ1デバイスに限定しても防ぐのは簡単ではありません。いわゆる耐タンパー性のある装置を使えるなら、その装置のセキュリティを前提に防ぐことはできます。
とはいえ、オフライン時に二重支払いしても、そのログをネットワーク復旧時にブロードキャストすれば、二重支払い者はわかるので、罰するなり信用スコアを下げるなり色々できると思います。 LayerX _中村様 - 金利をつけずとも普及させるには何が重要でしょうか?
回答)そもそもCBDCには、金利を付けることは必須ではありません。支払手段として考えたときには、CBDCには金利をつけることは必要ではありません。
CBDCが、紙の銀行券より(また電子マネーやQRコード決済より)、使い勝手がよいものになれば、自然と普及していくのではないかと考えます。 麗澤大学_中島様 - 新型コロナウイルスはCBDCの議論にどのような影響を与えたのでしょうか?
回答)BIS(国際決済銀行)のブノワ・クーレ局長は、最近、「新型コロナの感染拡大は、CBDCの開発を最速ギアに入れた出来事として経済史に残るだろう」と述べています。 麗澤大学_中島様 - 中国は昨年末に言われていたよりもスタートが遅い印象もありますが、何がネックになったのでしょうか?
回答)コロナだと聞いています。 ソラミツ_宮沢様 - バコンについては匿名性の課題は解決したとのことですが、現在テストが行われている他のCBDCではこの課題は解決されたのでしょうか?
回答)デジタル人民元では解決したと聞いております。 ソラミツ_宮沢様 - デジタル通貨を現金と同じ通貨価値だと信用させる為にはどの様にしたらいいのでしょうか?
回答)デジタル通貨と現金が1:1で常に交換可能になっていることが肝と思います。
とはいえ、新しい仕組みを信頼して使ってもらうには、丁寧な対話と、ある程度の時間がかかるとは思います。 LayerX _中村様 - 本来的にはそうなのでしょうが、すべての機能を1箇所に持ってしまったときのリスク分散の問題でしょうか?
回答)CBDCにおいては、どの機能を誰が・どんなシステムで担うのかには色々なバリエーションがあり、必ずしも中央銀行が一つのシステムで担うわけではありません。設計次第で、様々なリスクに対してロバストにすることが可能かと思います。 LayerX _中村様 - 天災や人災で電力・通信ダウンした場合、たとえ短期間であってもリテール・ホールセール決済できなくなるのは致命的ですが(実際日本でも近年いくつかの災害時に直面しましたが)、現実的な対応策についてのご意見を伺いたいです。
回答)故障といってもシステムのどの部分がどのように故障するのか様々なパターンがあり、それらを分析した上でできる限りロバストなシステムにするものと思います。
例えば、一口に故障といっても、通貨の原簿を管理するシステム周りの故障なのか、一般ユーザーがスマートフォン経由でアクセスする回線の故障なのか、etc… で異なります。
前者に関しては、複数ノードに冗長化するなどで、一定未満のノードの故障であればシステム全体としては生き続けるようにできます。
一般ユーザーのオフライン時の決済に関しては、現金か、現金に代わる物理で完結する仕組みと併用するなどになるかなと思います。(他にも色々なパターンがありますが、今回は省略させていただきます) LayerX _中村様
■関連資料
ご登壇いただきました、日本銀行の副島様より、質問に関する関連資料(日銀エグゼクティブの講演や公表研
1)講演
「中銀デジタル通貨と決済システムの将来像」
「決済の未来フォーラム」における挨拶
副総裁 雨宮正佳
2020年2月27日
https://www.boj.or.jp/announce
「決済のイノベーションと中央銀行の役割―ステーブルコインが投
創立35周年記念FISC講演会における講演
総裁 黒田東彦
2019年12月4日
https://www.boj.or.jp/announce
「日本銀行はデジタル通貨を発行すべきか」
「ロイター・ニュースメーカー」における講演
日本銀行副総裁 雨宮 正佳
2019年7月5日
https://www.boj.or.jp/announce
2)研究論文
欧州中央銀行との共同プロジェクト「ステラ」第1~第4フェーズ
https://www.boj.or.jp/paym/fin
日本銀行金融研究所ディスカッションペーパーシリーズ 2020-J-8
暗号資産とブロックチェーンの安全性の現状と課題
松尾真一郎
https://www.imes.boj.or.jp/res
日本銀行金融研究所ディスカッションペーパーシリーズ 2020-J-5
多様化するリテール取引システムのセキュリティ:ビジネスリスク
宇根正志、沖野健一
https://www.imes.boj.or.jp/res
このほか決済セキュリティ関連の研究多数。金融研究所のサイトで
「中央銀行デジタル通貨に関する法律問題研究会」報告書
2019年9月27日
中央銀行デジタル通貨に関する法律問題研究
https://www.boj.or.jp/announce
「証券取引における分散台帳技術の利用を巡る法律問題研究会」報
――証券決済制度と分散台帳技術――
2017年11月9日
証券取引における分散台帳技術の利用を巡る法律問題研究会
https://www.boj.or.jp/announce
3.フォーラム
決済の未来フォーラム
2020年 2月27日
日本銀行決済機構局
https://www.boj.or.jp/paym/out
第8回FinTechフォーラム~企業の決済・商流データの活用
2019年6月21日
日本銀行決済機構局FinTechセンター
https://www.boj.or.jp/announce
第5回 FinTechフォーラム~ブロックチェーン・分散型台帳技術(
2018年2月14日
日本銀行決済機構局FinTechセンター
https://www.boj.or.jp/announce